建設・土木業界の2021年1〜3月のM&A発表件数は17件で、1〜3月としては2012年以降の10年間では2019年(9件)を上回り、過去最多となった。企業の選択と集中や人材不足などを背景に、企業買収の動きが活発だった。新型コロナウイルスの感染拡大が、企業の事業売却など生産性向上に向けた動きを後押しした側面もありそうだ。
取引金額は約66億6700万円で、1〜3月としては2012年以降の10年間では5番目という中位の規模になった。100億円を超える大型案件がなかったのに加え、金額を公表したのが4件にとどまったため件数ほどには伸びなかった。
全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。
金額トップはオーテックの35億7600万円
金額のトップはオーテックが、アサヒホールディングス傘下で放射冷暖房システムの設計・施工を手がけるインターセントラル(東京都中央区)の子会社化を決めた案件で、取得金額は35億7600万円だった。
オーテックは空調自動制御システムの設計・施工の「環境システム事業」と、管工機材と住宅設備機器を販売する「管工機材事業」を両輪とするが、いずれの部門でも相乗効果が見込めると判断した。
インターセントラルは放射熱を利用した放射冷暖房システムや電気暖房機器を製造、販売しており、ビルのエントランスや病院、空港、図書館などで採用実績を積んできた。
金額の2番目は東京エネシスが、日立プラントコンストラクション(東京都豊島区)から火力発電に関連する事業の一部(売上高約122億円)を取得することを決めた案件で、取得金額は22億~28億円。
中核と位置づける電力設備の建設・保守事業を拡充するのが狙いで、日立プラントコンストラクションの技術力や人材を取り込み、生産性向上やグローバル展開、協力会社体制を活用した施工力強化などの相乗効果を見込む。
金額の3番目はウィルが、富裕層向け高価格帯リフォームを主事業とする全額出資子会社の遊(神戸市)の全株式を、住宅・店舗内装工事のアートリフォーム(大阪府吹田市)に譲渡することを決めた案件で、譲渡金額は1億5000万円。
このほかに1億円台の案件が1件、金額非公表が12件、合併が1件あった。