建設・土木業界の2020年のM&A発表件数は31件で、2011年以降の10年間では2018年に次ぐ2番目となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で景気が低迷するなか、事業の拡大や体制強化などを狙いとした案件が少なくなかった。
 取引金額は約1122億円で、2011年以降の10年間では2019年を上回り過去最高となった。前田建設工業による大型の案件があったため金額が一気に膨らんだ。
 全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介の株式会社ストライク(M&A Online)が集計した。

金額トップは前田建設工業の861億円

 金額トップは前田建設工業が1月20日に、持ち分法適用関連会社で道路舗装大手の前田道路に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、株式の保有割合を24・68%から51・0%に引き上げると発表した案件で、買付代金は約861億円。
 前田道路は同日付で、前田建設が保有する全株式を自己株取得して、同社との資本関係の解消を提案する書面を送付したと発表したことから、敵対的買収に発展した。TOBは3月12日に成立し、前田道路は前田建設工業の子会社になった。
 金額の2番目はヤマダホールディングス(2020年10月1日にヤマダ電機から社名変更)が9月8日に、注文住宅を主力とするヒノキヤグループに対して子会社化を目的にTOBを実施すると発表した案件で、買付代金は最大約126億円。
 ヤマダホールディングスは家電販売にとどまらず、「暮らしまるごと」をコンセプトとし、住宅やリフォーム、インテリアなどに事業領域を広げており、今回の子会社化もその一環。TOBは10月23日に成立した。
 金額の3番目は常磐開発が11月13日に、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した案件で、買付代金は約61億円。
 主力の建設事業を取り巻く経営環境が厳しくなるなか、環境関連をはじめ、新規分野への展開など、抜本的な構造改革を進めるためには、短期的な業績や株価動向にとらわれない体制づくりが必要と判断した。
 同社会長の佐川藤介氏が設立したエタニティ(福島県いわき市)がMBOを目的とするTOBを実施し、全株式の取得を目指す。当初2020年12月28日までとしていた買付期間を2021年1月25日まで延長し、現在もTOBが進行中。

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